2019/10/31
さまざまな場所を旅する筆者。その中でも、特にスペインのワイン文化に敬意を払っている。フランス、イタリアがヨーロッパのワイン産地としては大変有名だが、スペインもそれに比肩する古い歴史を持ったワイン大国だ。ここでは、スペインワインの特徴を紹介していこうと思う。
スペインワインの特徴
まず、スペインワインとはどんなワインなのか、簡潔に解説にしていきたい。
特徴① スペインは世界第3位のワイン生産国
世界のワイン生産量の1位、2位はフランスやイタリアが毎年競い合っており、その年によっても変わってくる。
しかし、安定して生産量上位に位置しているのはこの二国だけでなく、スペインも同様だ。2017年の生産量はフランス、イタリアに次ぐ3位。近年、ニューワールドやさまざまな国のワインが増えているが、スペインを含めこの3国は頭ひとつ飛び抜けた量のワインを製造している。
ちなみに、国別ブドウ栽培面積だが、スペインが群を抜いてたかく、生産量上位を独占しているフランスやイタリアよりも広いのだから驚きだ。冒頭、フランスやイタリアに比肩するワイン大国とお伝えしたが、その理由はデータからも見てとれるのではないだろうか。
特徴② 価格帯の幅が広い
スペインワインの特徴は、かなり価格帯の幅が広いというところだろう。フランスワインは高いというイメージがあり、イタリアワインは逆に安いというイメージがついている。
どこの生産国も基本的には価格の幅は広いのだが、スペインは特にその幅が広いところが魅力のひとつとも言える。有名な生産者が手掛けているワインであれば、1本数万円以上するものがあったりするが、5,000円前後の高級ワイン、2,000円前後の普段使いしやすいワインも多数ある。
さらに、1,000円代、500円前後というワインはかなり多くあるので注目だ。日常的にワインを楽しむ文化が根付いているスペインだけに、高級ワインばかりではない、非常にリーズナブルなものが多いのも嬉しいところ。
安かろう、悪かろうといったワインではなく、良質で普段使いしやすいものも多くあるのでチェックしてみよう。
特徴③ スペインならではのワインも存在する
スペインには、普通のスティルワインだけでなく、スペインだからこそのワインも存在している。
フランスのAOCと同様に、ワイン法で定められている製法(参照:日本ワインの表示法)などによって造られているワインであり、似たようなものを造ることはできるだろうが、その名を使用して市販させることはできない貴重なアイテムだ。
ここからは、そんなスペインならではの魅力的なワインを紹介していこう。
カバ
カバは、スペインで造られているスパークリングワインのひとつ。スパークリングワインの最高峰として知られているシャンパーニュと同じ、「瓶内二次発酵」で造られており、最低でも9ヶ月の熟成が定められている。
カバは、カタルーニャ語の「洞窟」を意味する言葉で、その昔は地下の洞窟で熟成させられていたことが由来だと言われてる。カバは地名ではなくワイン名であり、原産地呼称とは若干違っているが、ほとんどがカタルーニャ地方で造られている。
手が込んだ造りでありながら、カジュアルな価格で楽しむことができるため、日本でも人気が高いスパークリングワインだ。
引用:Wikipediaより
シェリー
スペインワインの中で、世界に誇るべきワインがあるとすれば、間違いなくシェリーだろう。シェリーは分類的にワインだが、酒精強化ワインとして扱われているアルコール度数がやや高めのワインだ。
アンダルシア州カディス県を中心に製造されており、目指す味わいによってパロミノ種やペドロ・ヒメネス種、モスカテル種などが使い分けられている。
シェリーの造り方は特殊だ。アルコール醗酵を長く続け産膜酵母という膜を造らせる。途中にアルコールを添加することで醗酵工程をストップさせ、アルコール度数を高めたり甘くしたり、生産者の目指すスタイルによってさまざまな工夫で仕上げられていく。
魚介料理に非常に良く合い、現地でも魚料理と楽しまれている。
引用:https://mebius0214.com/sheri-shu/
スペインはブドウの生産量も非常に多い
冒頭で紹介したが、スペインがユニークなのがブドウ自体の生産量が多いというところだろう。フランスの場合、畑でブドウ栽培があまり盛んではない地方が多く存在しており、実は全土でワインが造られているわけではない。
その証拠に北部のノルマンディー地方の有名なアイテムは、リンゴを使用した醸造酒のシードルだ。一方、スペインは全ての地方でブドウ栽培が行われており、栽培面積がかなり多く、その結果ブドウの生産量も多い。
2014年のデータでは、スペインは年間で約622万トンのブドウを栽培しており、その数はフランスよりも多い。ブドウ自体が多く栽培されていることでワイン製造が盛んなのは当然だが、だからこそ、その地域性のあるシェリーやカバなどの特殊なワインも生まれていったのではないだろうか。
スペインの気候の特徴
スペインは山脈が多く存在しており、それが気候に影響を与えていると言われている。ただ、全体的に雨量が少なく、日照量が多く乾燥地帯が多いことからブドウ栽培に向く産地として知られている。
しかし、バスク州沿岸部の場合は年降水量が1,500mmと多く、内陸部とは大きく違ってくる。とはいえ、ブドウを棚栽培するなどして工夫していることから、素晴らしいワインが造られているのがスペインワインの面白いところだろう。
ちなみに、夏はかなり暑く摂氏40度を超えることも多いことから、アルコール度数が多いどっしりとしたワインが造られることも多い。
ただ、近年は冷涼な気候を求め、ブティックワイナリーなどが標高の高い場所でブドウ栽培をスタートさせ、素晴らしいワインを造るようになっている。基本的には、雨量が少なく、日照量も豊富であるワイン向きの生産国として覚えておくと良いだろう。
画像はピレネー山脈
引用:https://www.ab-road.net/europe/spain/heritage/000839.html
スペインの地勢の特徴
スペインワインを語る上で重要になってくるのが、地勢だろう。前述した通り、気候条件は揃っており、乾燥していることからワイン用ブドウの栽培には適している場所である。
標高500-800m前後の広大な高原であるメセタが重要なポイントで、ここを起点にスペイン全体に河川が走っている。
河川の周辺にはブドウ畑が多く点在しており、これがスペインをワイン大国へと成長させた最大の特徴ではないだろうか。
さて、そのメセタから流れていっている重要な河川だが、まず重要な役割を持っているのが東の地中海に向かって流れているエブロ川という河川だ。これは、スペインワインを代表するのリオハとカタルーニャなど、スペインワインにとって重要な産地へと流れ込んでいる。
また、大西洋に向かって流れているドゥエロ川は、高級ワインを多く産出するリベラ・デル・ドゥエロを通って、そのままポルトガルへと流れ込んでいる。ちなみに、この河川の周辺はポルトガルの代表的な酒精強化ワイン、ポートワインの主要産地として世界的に知られている場所となっている。
そして、タホ川はラ・マンチャ、グアダルキビール川はシェリーの大産地である、サンルーカル・デ・バラメダを流れている。
このように、スペインは気候条件だけではなく、河川などの地勢も手伝うことでワイン産地として成長し続けて来たのだ。もちろん、あまり難しいことを考えても仕方が無いが、知っておくだけでも今後スペインワインを飲む時に役立つことだろう。